■ 市振-その1      新潟県糸魚川市
↑信越本線・市振駅。駅から、親不知方面を見る。市振の関は、親不知の西側に位置する。
2011.6.19JRを利用して、信越本線 親不知駅・市振駅を訪れました。

  
 新暦8月26日、市振の関に泊まった。

今日は、親知らず子知らず・犬もどり・駒返しなどという北国一番の難所を越えて疲れたので、枕を引き寄せて寝てい
ると、一間隔てたおもての方の部屋から若い女二人の声がしてくる。
年を取った男の声も混じって世間話をしているのを聞くと、越後の国・新潟と言う所の遊女であった。
お伊勢参りをするというので、この関まで男が送って来て、明日は故郷に返す手紙を書いてちょっとした伝言などをし
ているようである。白波が押し寄せる浜辺の町に遊女として身を晒して、漁師の子のごとくひどく落ちぶれて日々客を
取り当ての無い契りを交わす生活を送る私たちの因縁は何なんだろうなどと言う話を聞きながら寝込んでしまった。
翌朝旅立つときに、我々に「どう行ったら良いか分らない旅、不安で悲しくございますので、見え隠れ程度で宜しいで
すから、貴方様方のあとを付いて行きたく思っています。僧衣をまとっているお情けとして、仏の大慈をお恵み下さい
まして、仏道との縁を結ばせてくださいませ」と涙ながらに訴える。
「気の毒なことでは有りますが、我々はあちこち寄り道しながらの旅。あなた方は、ただ人の流れに任せて後をつい
て行きなされ。伊勢神宮のご加護の下、きっと無事に着くことが出来るでしょう」と言い置いて出発したものの気の毒
だったなぁという気持ちがしばらく納まらなかった。

  
一家(ひとつや)に遊女もねたり萩と月
          …一軒の家に我々と共に遊女も寝ていたよ。まるで、地上の萩と天上の月のような組み合わせだった。

曾良に話すとそれを記録してくれた。
      
<駅情報>  JR市振駅。駅舎の隣にはトイレが有り、駅前には食料品店もある。 昼時などの訪問になった場合は、駅から、西側に5分ほど歩くと
道の駅・市振があります。食堂、資料館があり腹ごしらえや列車待ち合わせの時間つぶしもOK。ここの売店は、コンビニです。
 駅を降りて左手(東側・糸魚川方面)に進むと、芭蕉の看板が迎えてくれ、陸橋を越えると市振の町並みに出ます。
 程なく、小学校に出ますが道路沿いの校庭の一部に「市振関所跡」の石碑が立っています。
 諸先輩方の「市振紹介」を見ていると、松の木と宿跡の石碑のだけが載っているので凄く寂れた村かな?と、思って
しまいますがなかなかの家並みが揃っています。
 一つ上の場所の案内板と桔梗屋跡の石碑。
 更に奥に進むと、海道の松の近くに「弘法の井戸」がありました。
 宿場・市振の外れに有る「海道の松」。
西から来た旅人はここから海岸線に下り、荒れれば命も危うい難所「親不知・子不知」へと向かっていくことになります。
又、東から来た旅人はこの松まで辿り着きほっとして市振の宿場で一休みしたとのことです。
地元の人が大切に育ててきたこの松。現在の松は樹齢200年と言われているそうです。
 市振-その2に続きます。