■ 全昌寺  石川県加賀市大聖寺
  
1689年新暦9月21日、芭蕉は全昌寺を訪れ宿泊する。

 大聖寺の城外全昌寺と言う寺に泊まる。ここは未だ加賀の土地である。曾良も前の日ここに泊まり

 
終宵(よもすがら)秋風聞くやうらの山  曾良
   …(芭蕉師匠と別れて一人でこの寺に泊まったが寂しさの余り眠ることが出来ずに一晩中裏山に吹く秋風の音を聞いていたことよ)
と残していった。
曾良と私は一夜を隔てているだけだけど、会えないということは千里離れていると同じことである。私も曾良と同じく
秋風を聞きながら僧侶の宿舎に休むと、明け方近くお経を読む声が澄み切って聞こえる内に合図の鐘板が鳴って
食堂に入った。
今日は越前の国に入ろうと心慌ただしくお堂の下に降りる私を見て、若い僧たちが紙や硯をもって階段まで追いか
けてくる。丁度そのとき庭の柳がはらはらと散るので


庭掃いて出でばや寺に散る柳
…(一宿一飯の御礼にせめてこの寺に散っている柳を掃いてから出発したい)

と、取り急ぎわらじを履いたまま書き捨てるように与えた。
 山門前に五百羅漢、芭蕉旧跡と刻まれている碑のある全昌寺。このように、芭蕉を前面に打ち出しているところは珍しいですね。
山門の脇に芭蕉碑、曾良の句碑が有ります。

  
今回は、JR加賀温泉駅から出る『キャン・バス』を利用しました。海まわりコースに乗り一つ目の停留所、石川県九谷焼美術館前で降りると
近いです。交通手段としては、JR加賀温泉駅から隣のJR大聖寺駅からも行く方法が有ります。
芭蕉塚と曾良の句碑が並んでいます 『ばせを塚』と書かれている芭蕉碑
 曾良の『終宵秋風聞くやうらの山』の歌碑。 その近くに奥の細道より全昌寺の部分の一節が刻まれた石碑が有ります。
 全昌寺は五百羅漢で有名です。本堂脇、芭蕉碑の近くに有ります。
 本堂には杉風作のにっこり微笑んだ芭蕉木像が有ります。また、本堂内の右手に芭蕉庵と名付けられた茶室があり、ここに芭蕉が泊まった
といわれています。